朝の旋律、CHOCOLATE ~Whole Lotta Love~


「……哲」


開いたままのカーテンの陰に。

ご両親が、疲れたように腰掛けで、でも笑顔があるのを、見た。


「ああ!倉橋さん、ありがとうございます」


立ち上がって、椅子を譲ってくれようとしたお父さんに、私は座っていてくれと手を挙げる。



「……蜜、悪かったなぁ」

心配かけて、と。



哲の、声。
数時間ぶりに聞く、声。


いくら涙もろい自覚のある私でも、まさかこの程度の事で。




「………」

「泣くなって」



ご両親いるのに。

ほらみろ、目を逸らされたじゃないか!

なに笑ってやがる!
怖かったんだからな!



「蜜」

「な…によぅ」


「……映画。もう間に合わないか?」



………あぁ、映画。

ちゃんと断ったから。
延期、してもらったよ。


治ったら…行こうね。


雪音ちゃんも、心配してくれてた、よ。



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