朝の旋律、CHOCOLATE ~Whole Lotta Love~
「なに弾くの?」
遼と私は、金管奏者。
だけどよく、ピアノも弾く。
遼と1台4手の連弾はしたことがないけれど、ピアノと金管のセッションは、たまにやる。
「ラフマニノフ、いける?」
「……協奏曲の第二番なら」
ちょっと前に流行ったから、練習したし。
「じゃあ、それで」
にこりと。
綺麗な顔立ちが、笑う。
とても、近くで。
ああ。
どうしよう。
だんだん、心のタガが外れていくのが解る。
怖くて、たまらない。
哲がいない。
それだけのことが、こんなに寂しいと感じるなんて。
寂しいって認めるのが、とても怖い。
まるで
まるで。
恋みたいで。
遼の、細くて長い指がゆっくりと。
キーボードの軽い鍵盤を、滑り出す。
私は広げられた譜面と、遼の奏でる音とを照らし合わせながら何章か弾くと。
耐えきれずに、泣いた。