朝の旋律、CHOCOLATE ~Whole Lotta Love~
「そういえば、さ」
助手席のドアを開けてくれながら、遼が言う。
地下駐車場のこの場所は、真冬でも、なんとなく暖かい。
「蜜の部屋の隣に居る…ひと」
「…哲?」
そうそう、赤い髪の、と、頷きながら、ドアを閉め、運転席へと回る。
哲が、どうかした?
「…その“哲”くん、好き?」
運転席のドアを閉めれば、車内は暗い。
遼はエンジンを掛けながら、さらりと、そんな事を訊いた。
「うん、好きだよ?」
「…………実は彼氏…なの?」
……えぇ?
なんで、そうなるの?
哲は好きだけど、彼氏な訳、ないじゃん?
「違うよ。哲は、隣に住んでるだけの、仕事の先輩」
雪音ちゃんを好きな事は言わない方がいいかも知れない。
もし、うまく行かなかったら、哲が可哀想だ。
「そっかあ良かった」
雪音ちゃんと映画を見に行く日、終わったら私はひとりで楽器を見に行こう。
2人だけで、話せるように。
哲には、幸せになって貰わないと。