朝の旋律、CHOCOLATE ~Whole Lotta Love~
「どこかって?」
玄関側に、街灯はない。
このあたりは、街は明るいけれど、少し裏に入れば、すぐに真っ暗だ。
「蜜が、どこか行きたいとこあれば」
眼鏡のない、遼。
味気ない王子様のようだ。
綺麗で、優しくて。
少しだけ、甘すぎる。
「ん~…直売所………とか」
「直売所!?」
「…野菜と果物、ないの」
主に、鳥にやるリンゴが、なくなる。
このあたりは、物価も高い。
無駄に都会で、私みたいな独りで暮らす女には、楽しいけれど、三度の食事をとらなければならない身としたら、少しお財布もキツくなりがちだ。
「…じゃあ、明日、迎えに来るから。具合悪かったらメールして」
遼は、ことさら甘く声を落とす。
暗さも手伝って、少しだけ眼鏡が無くても、ドキドキ、した。
やっぱり、男の癖に、綺麗だなんて、ズルいよね。