朝の旋律、CHOCOLATE ~Whole Lotta Love~
遼は、二階にある私の部屋の前までは、いつもトランペットを運んでくれる。
「ありがとう、お茶でも飲んでく?」
「今日はいいよ、具合悪そうだもん、何か食べて、早めに寝なね?」
「具合…そんな悪くないよ?………でも、うん、早く寝る」
遼の楽器は、車に載せたまま。
トランペットより、一見華奢に見える、バストロンボーン。
私も吹いた事はあるけど、ちょっと肺活量が足りない気がして、遼のような音は出なかった。
「遼、…ごめんね。コンクール近いのに」
貧血起こして曲を中断させるなんて。
意地で乗り切るには、ちょっと視界が歪みすぎた。
迷惑かけたのは確かだから。
「大丈夫だよ。蜜、明日……具合悪くなかったら、どこか行かない?」
遼が、私の頭を撫でるように手を置く。
遼は背が高いから、いつでも覗き込むように、私の顔を見る。