ほどよいあとさき
そして。
「じゃあ、アマザンでの結婚式は諦める。でも、そのうちのんびりとアマザンに泊まろうよ。で、いちゃいちゃ新婚バカップルのお泊りごっこをしようね」
少し落ち込む歩の腕にしがみつきながら、わざとらしい上目遣いでそうお願いした。
もちろん、私に心底惚れてる歩には、この上目遣いはかなりの効き目があると、自覚している。
「ああ、新婚旅行から帰ってきたら、早速泊まろう」
いちゃいちゃ新婚バカップルのお泊りごっこは、その日のうちにアマザンのダブルに予約された。
スイートルームではないところがサラリーマンの現実だ。
そんな経緯を経て、結婚式は両家の親族と、「KH建設」「片桐デザイン事務所」の社長に見守られる中でとりおこなわれ、涙溢れる厳かな式となった。
アマザンほどではないにしても、高級ホテルでの披露宴。
このホテルは、実は歩のご両親が結婚式を挙げた思い出のホテルらしく、そのことを私に打ち明けた時の歩はとても照れていてかわいかった。
もちろん私に異存なんてあるわけもなく、即決。
歩のお母さんはとても喜んでくれた。
そんな歩のお母さんと妹さんには、その日以前から仲良くしてもらっている。
けれど、お母さんは、お父さんの起こした事故が原因で、歩は一生結婚できないと諦めていたらしく、結婚式を無事に終えた時、本気で泣かれてしまった。