【完】俺が消えてしまう前に


七海も何かを感じ取ったんだろう。
俺の方を見て軽く頷いた。


「愛希が・・・愛希が何ですか?」


愛希の母親が七海にそう言う。

声はひどく震えている。
体も小刻みに震えているようにも見える。


「あの、愛希ちゃんを・・・連れてきたんですけど」


「・・・愛希を?」


「はい。迷子になっていたみたいなので」



愛希の母親は
今までの雰囲気を一変して
家の中に招いてくれた。


「わざわざありがとうね。今お茶出すからね」


「あ、お構いなく!」


俺もとりあえず頭を下げ、ソファに座った。

愛希も隣に座らせ落ち着かせた。


・・・さっきの愛希の母親の雰囲気はおかしかった。
今愛希を近づけちゃ駄目なはずだ。


「ねーいっちゃんはなしてよー!」


「後でじっくり自由にしてやるから。今はおとなしくしろ」


「むー・・・」



愛希を挟んだ隣に座っていた七海が俺を小声で呼ぶ。


「樹君!」


「ど、どうした?」


「・・・あれ、見て」



七海の指さす方向。

そこにはあり得ないものが見えた。

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