【完】俺が消えてしまう前に
「ここ!あきのおうちここだよ!」
「愛希ちゃんもこう言ってるし・・・インターホン押していい?」
俺は頷いた。
それと同時に七海は家のインターホンを押す。
数分してから、
元気のない高い声が聞こえてきた。
『どなたですか』
生気のない声、とでも表現すればいいのか。
とにかく弱々しい。
「あのー。愛希ちゃんの事で・・・」
七海がそう言った瞬間。
インターホンはぶちっと切られ、慌ただしい音と共に玄関の扉が開いた。
そして愛希の母親らしき人が出てきた。
元は綺麗な人だったんだろう。
顔立ちは整っていて、スタイルもいい。
でも、長い髪の毛は乱れているし
顔はやせ細っていてクマが出来ている。
「ままー!」
愛希が母親の元へ走ろうとする。
だけど、俺は愛希の手を離さなかった。
なぜかただならぬ雰囲気が漂っていたから。
「なぁに?いっちゃん・・・!はなしてよー」
「いいから、ちょっと待て」
「なんでなんで!あき、もう帰るのー!おうち帰る!」
愛希はばたつく。
俺は愛希を抱きかかえた。