【完】俺が消えてしまう前に


聖子さんは部屋の周りにあるろうそくに火をつけ始めた。


周りの壁は黒く塗りつぶされている。

お札が不気味な雰囲気も醸し出している。




「本来は憑かれてる人をこの真ん中の椅子に座らせるんだけどね。幽霊本人に座ってもらえるなんて光栄だわぁ」


そう言いながら俺を真ん中にあった椅子に座らせる。

もちろん、俺から進んで座ったんだけど。



「さてさて、そろそろ始めよっか」


「・・・分かった」


「少し苦しいかも。っていうか悪霊じゃないからもしかしたら悪霊よりももっとひどい痛みとか与えちゃうかもしれないからね。本当に覚悟して」



すっと聖子さんの顔が真剣になった。

俺は頷く。



「じゃあ始めるよ」


なんだか分からない呪文のようなものを聖子さんが呟く。

すると周りにあったお札やロウソクの火が風もないのに揺れ始める。




俺は目を閉じた。

そして七海の笑顔を頭に浮かべる。



『樹君♪』


俺の名前を呼ぶ七海。


『樹君!』


いつでも優しかった。
今でも愛おしい。


『樹君・・・』


愛希が言うように生まれ変われるのなら、七海を守る騎士になれたらなと思う。


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