【完】俺が消えてしまう前に


「いっちゃん!!」


「・・・!?」


俺はいつの間にか、廊下で横になっていた。
窓の外を見ると少し空が赤く染まっている。


「愛希・・・」


「どうしてこんなところで寝てるの?」


「いや、分かんない」


なんか、長い夢を見ていた気がする。

だけど思い出せない。
思い出そうとすると少しだけ頭が痛む。


「びっくりしたよ。いつの間にかいなくなってて」


「ごめん」


「だいじょうぶ!それよりね?なっちゃんが・・・」


「七海・・・!そうだ、七海は!!」


「・・・うん」




俺が七海を心配する権利なんてもうないはずなのに。

一度七海を見捨た俺なんだ。
・・・心配する権利なんて。


だけど俺の体は動いていた。




「七海は女子トイレにいるんだな?」


「うん!」


「分かった」


「あきだけじゃどうしようもなくて・・・。いっちゃんみたいに力使えないから・・・」


「お前はまだ使えなくていいよ。小さいんだから」


俺は愛希の頭をぽんぽんと撫でた後、
急いで女子トイレに向かった。



**
< 44 / 166 >

この作品をシェア

pagetop