てのひらを、ぎゅっと。


自分でも、すごく単純だと思う。


あの人の名前を聞いただけで、こんなにも胸が温かくて、嬉しくなるんだもん。


一秒でも早く会いたいんだ。


もう私の心は重症だよ。


キミ色に染まっちゃったんだ。


「お母さん、行ってきます!」

「はいはい。行ってらっしゃい」


お母さんの声を背に、私は玄関まで猛ダッシュ。


歩いてる時間がもったいない!


そしてその勢いのまま玄関へ行くと、靴を乱暴に履き、扉を開いた。


「玲央、おはよ!」


私は今日最初のとびきりの笑顔を彼に向けた。


腰の少し上まであるストレートの黒髪が、春風に乗ってふわりとなびく。


そんな笑顔の私に答えるように………


「お、紫苑。はよっ!」


彼も私にとびきりの笑顔を向けてくれた。


ドキッ………。


私は今日もこうやって、彼に魔法をかけられたみたいに動けなくなるんだ。


< 336 / 465 >

この作品をシェア

pagetop