てのひらを、ぎゅっと。


希衣はやっぱり、あの頃と同じように笑っていた。


その笑顔がやけに切なくて、俺は気づけば希衣の手を引き、自分の腕の中に希衣の体を閉じこめていた。


「………ごめん」


そんな顔させてごめん。


「でも俺……」


”希衣のことちゃんと愛してるから“


そう言おうと思ったのに、


「分かってるよ。光希くんからの愛、
しっかり伝わってるから。心優先輩も光希くんの大切な人。私も光希くんの大切な人。そうでしょ?」


そう言って笑う希衣に言葉を遮られた。


「私は光希くんに愛されてるから幸せだよ?へへっ」


またひとつ微笑む希衣。


俺もそんな希衣と一緒に笑った。


「ありがとうな……。愛してるよ」


そして、俺はそっと希衣の唇に自分の唇を重ねた。


< 415 / 465 >

この作品をシェア

pagetop