等身大の自分
第1章
「1週間すごく悩んだ。こんなに悩んだのは久しぶりなくらい。…悪い。やっぱり前も言ったとおりだ」


「わかってる。あやが村山先生を好きだって相談した時も無理って言ってたもんね。なのに私が桐生先生を好きって言ってOKもらえるわけないよね。良かった、断ってくれて。あ、私なならすぐに大学で彼氏見つけるから大丈夫だよ!」




そんなことを言ったのは強がりでもなく、狙ったわけでもなく、自然と笑顔で言うことで安心してほしいと願ったからだった。


高校3年生の春、大学入学を目前に私の片思いが終わった。









先生と生徒の恋。


当時は禁断の恋のブームだった。
でも塾の先生と生徒は禁断に入るのかな?


好きになるつもりなんてなかった。
駄目だって最初は諦めて、憧れなんだって言い聞かせて。


でも受験生だからってあとから入ってきたあやが当時大学生でアルバイトとしていた村山先生を好きになって相談されて、好きになってもいいのかなって思った。


気持ちを伝えるかはどうかは別にして、人を好きになることにトラウマがあった私はとりあえず好きという気持ちを大事にしてもいいかなって自分の気持ちを大事にしよう、自己中になってやろうと思った。



(表だって迷惑かけてないもん。先生に質問したいからって勉強頑張るようになったし、気持ちは自由だよね!)



でもものすごく悩んだ時期もあった。
塾をやめてから振られるのも、わかってて告白した。


悲しいけれどどこかすっきりしたの。
恋をすることに、結婚を夢見ることに、戸惑いがあった私がもう一度恋できてよかったって思えたから。



……だから大丈夫。



私にとってこの恋は、もう一度恋をすることができた。
友達と嬉しさや辛さを共有して女の子としていられたという思い出だったのだ。
< 1 / 2 >

この作品をシェア

pagetop