魅惑のハニーリップ
 冷たいお茶をグラスに注いで、宇田さんに差し出すときにチラリと盗み見ると、やっぱりおととい見たまま……目の下の似つかわしくないクマは消えていなかった。
 仕事で疲れているのは一目瞭然。

「お疲れ様でした。今回の仕事……大変でしたね」

「ああ。今回は確かにきつかったよ。体力も気力も相当使った感じがするなぁ。でも……終わったから」

「はい。よかったです、無事に終わって」

「うん、ホッとした。ホッとしたら遥ちゃんに会いたくなった」

「え?」

「電話とかメールじゃなくて、直接会ってゆっくり話したかった」

 きっと、普通に働いてるときの何倍も疲れてるはず。
 なのに、それでも私に会いたいって言ってくれたことが素直にうれしい。

 うれしいけど……宇田さんの体のことも心配になってしまう。


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