魅惑のハニーリップ
 ずっと会場のほうを向いてスピーチしていた宇田さんが、最後のところだけ高砂の佐那子さんに視線を移して語りかけた。

 佐那子さんはずっと涙を我慢していたけれど……
 宇田さんが話し終わるのと同時に、綺麗な涙が頬を伝った。

 きっとふたりにしかわからないこの九年がある。
 佐那子さんと宇田さん、部署は違うけれど互いに苦労した九年だ。
 励ましあい、切磋琢磨した九年でもある。

 それはこれからもずっと変わらない関係――

 宇田さんが佐那子さんを特別に思うのも……無理はないと思う。

 佐那子さんなら、私もちっとも嫌じゃない。

 私もふたりにはいつまでもこの関係でいてほしいと思うから。


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