魅惑のハニーリップ
「聖二は……そんなヤツじゃないよ。例え私を好きだとしても、私利私欲でエコヒイキする人間じゃない」

 そう言われると、自分がそんな風に考えたことが途端に恥ずかしくなってくる。
 宇田さんが私利私欲で動く人ではないのは、私もわかっているつもりなのに。

「遥ちゃんも販売促進部にいたら、営業部とも仕事の関わりが深いんだし、今度聖二の仕事ぶりを注意深く見てやって?」

「え?」

「聖二は、元から後輩の面倒見がいいのよ。自分がしんどくなるだけなのに、全部引き受けちゃうくらい」

 それって、まるで佐那子さんみたいだ。
 佐那子さんも後輩の私たちの仕事や、時にはミスですらかぶってくれた。

 宇田さんも同じタイプの人らしい。だから後輩からの信頼も厚いのかと納得してしまう。

「基本的に後輩のことは、誰にせよ放っとけないヤツなんだけど。遥ちゃんのことは、もしかしたらまた別なのかもね」

 それは……どういう意味なのだろう。
 そんなことをボーッと考えていたら、食後のデザートのアイスが運ばれてきた。

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