魅惑のハニーリップ
「男がひとりでこんなレストランには来られないんだから、遥ちゃんがたまにはつきあってあげてよ」

「はぁ……」

「私は、聖二は“イチゴアイス”が好きだと思うな」

 すごいな。やっぱり佐那子さんは宇田さんのことをよく知っている。
 食の好みまでわかっているなんて、仲の良さに歴史を感じる。

 ふたりでアイスを食べていたら、私のスマホにメッセージが入ってきた。

「あ……」

 思わず声が出てしまったのは、和久井さんからの連絡だったから。

『明後日、仕事が早く終わるんだけどふたりでご飯行かない?』


「どうかした?」

 私の複雑な表情を読み取って、佐那子さんがやさしく問いかける。

「和久井さんからです」

「ふぅーん。何か言ってきたの?」

「明後日、ふたりでご飯食べに行かないかって……」

 それを聞いた佐那子さんが、苦笑いをしながら困った顔をした。

「和久井くん、肉食系ではないはずなんだけど、意外とすばやい行動も起こすのね。しかも“ふたりで”って言っちゃってるし、デートのつもりだね」

 たしかに、今日のメッセージには“ふたりで”と書いてある。
 昨日の漠然とした内容のものとは違う。
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