魅惑のハニーリップ
「そうでしょうか? 佐那子さんみたいにスタイル抜群のほうがいいじゃないですか」

「そんなことないって! ほら、このチョコアイスもいいけど、イチゴアイスもおいしいでしょ? それと同じ。遥ちゃんはイチゴアイスみたいでかわいいもん」

 たしかにここのレストランのイチゴアイスは、色がショッキングピンクですごくかわいいし、味も絶品だけれど。

「イチゴもちょっと食べさせて?」

 佐那子さんが自分のスプーンを私のアイスのほうへ近づける。
 おもむろにひと口すくって、その美しい形の唇へ運んだ。

「やっぱりおいしい」

「ここのアイス、おいしいですよね」

「今度、聖二と来てあげてよ」

「へ?!」

「聖二ね、ああ見えてこういうのも食べる人なのよ」

「宇田さんがですか? それは意外ですね」

 また私の知らない宇田さんが垣間見えた。
 私の知ってる宇田さんと言えば……いつも居酒屋や会社の歓迎会なんかで、ビールを飲んでいる姿だもの。

 ふたりで食事に行ったこともない。
 だから、こんなお洒落なレストランで食後にアイスを食べてる宇田さんなんて想像もつかない。

 でも……佐那子さんとはあるんだ。
 ふたりで食事をして、食後にデザートを食べたことが。

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