魅惑のハニーリップ
「少し元気が戻ったみたいだな。表情が違う」

 宇田さんは安心したとでも言いたげにニコリと笑った。

「佐那子からメールで聞いたよ」

 え……佐那子さん、いったいなにを宇田さんに言ったのだろう?

「佐那子さんからどういう風に聞きましたか?」

「んー、遥ちゃんは和久井のことで困ってるわけじゃない、って」

 一瞬、ギクリとした。
 もしかしたら佐那子さんは、私と和久井さんのデートのことまで言ってしまったのではないかと思ったから。

「でも、和久井から絶対にアプローチがあると思うし。迷惑だったら、俺に言って?」

「宇田さんに、ですか?」

「うん。言い寄ってきて迷惑だったら、俺が和久井にちゃんと注意するから」

「でも……」

 それは、後輩を紹介した責任を、先輩として感じているだけなのだと思う。

< 33 / 166 >

この作品をシェア

pagetop