魅惑のハニーリップ
 休憩コーナーの販売機でコーヒーを買って、優子の待つオフィスまで戻る。

「遥、遅いよぉ!」

 私にコーヒーを買いに行かせたくせに、優子がおどけながら文句を言う。

「ごめん。そこで宇田さんに会ったから」

 ふぅ~ん、なんて最初は言っていたのに、優子は私が腕に引っ掛けている袋を目ざとく見つけた。

「それ、どうしたのよ?」

「ああ……宇田さんがくれた」

「宇田さんが、遥に?」

「休憩のときに食べてって」

 コクリと頷いて、宇田さんにもらった袋をデスクの上に置く。
 すると優子は中の箱を取り出して、マジマジと観察し始めた。

「これ……あそこのじゃん!」

「へ?」

「ほら、駅下にあるケーキ屋さんのロールケーキ!! 今、すごい人気のやつ!!」

「あっ!」

 以前から人気だったケーキ屋さんのロールケーキだ。
 それが最近雑誌に載ってしまったみたいで、さらに広い地域からお客さんが来るようになり、さらに人気が爆発している。

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