魅惑のハニーリップ
 仕事を終えて会社を出ると、同僚の優子(ゆうこ)と連れだって、待ち合わせ場所の居酒屋に向かった。
 
 しばらくすると、宇田さんが後輩らしき男の人をふたり連れてやってきた。
 スーツをパリっと着こなした人たちで、同じ会社に勤めているのに、私はその営業部の人たちが誰なのか、顔と名前が一致しない。

「ごめんな。遅くなった」

 宇田さんが申し訳なさそうに片手を上げて座敷に上がってくる。
 その後ろをにこにこと笑みをたたえながら後輩の人たちが続いた。

「えっと、営業部の後輩の和久井と佐藤」

 ぶっきらぼうな声音で、宇田さんが連れてきたふたりを紹介した。

「おつかれー! 初めましてだよね?」

 佐藤さん、と紹介された人が、にこにこしたまま奥の席の優子の隣にポスンと座る。
 少々馴れ馴れしいと感じたのは気のせいではないと思う。

「こんばんは」

 私の隣には和久井さんが座った。

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