魅惑のハニーリップ
「ったく、お前ら……連れてくるんじゃなかったよ。女の子たちに変なことするなよ!」

 ガッカリした面持ちで溜め息を吐きながら、宇田さんが後輩の人たちに釘を刺してくれた。
 そして私の目の前に座ってネクタイを緩め、暑いのかシャツの腕をまくる。
 その、まくったシャツから覗いたゴツゴツした腕が、筋肉質で、浅黒くて、男らしくて……反射的にドキっとしてしまった。

「あ、初めまして。池上遥です」

 宇田さんの腕からわざと視線を外して、隣にいる和久井さんへ挨拶した。

「俺は知ってるよ。遥ちゃんのこと」

「え?」

「よく書類を持って営業部まで来たりするでしょ」

 ……なんだ。 なるほど。
 そういうのでも見られてたりするものなのか。

「なに飲む? ビール?」

「あの……甘いお酒しか飲めないんです」

「そっか、じゃあカクテルとか?」

「……はい」

 優しく微笑みながら、和久井さんはドリンクのメニューを渡してくれた。

 それを見ながらも、ふと視線を上げると……目の前の宇田さんと視線がぶつかる。

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