魅惑のハニーリップ
「とりあえず大丈夫だ。首と肩はちょっと痛いけど、一応今、CTとか脳の検査もしたから」

 首に手をやりながら、宇田さんはやさしくにっこりと笑う。
 その笑顔がこれ以上ないくらい私の胸を打った。

 良かった、また宇田さんの笑ってる顔が見られた。
 ……本当に良かった。

 ひどい事故だったらと考えただけで背筋が凍ったから。

「よ、良かったぁ……」

 安心したせいか、私からは驚くほど気の抜けた声が出た。

「本当にごめん。心配させたよな」

「当たり前じゃないですかっ!! 事故にあったって聞いたから、どんなにひどい怪我をしたのか?って慌てました!」

「え?」

「だって……想像したら怖くなったんです。包帯でぐるぐる巻きにされて、意識不明とかだったらどうしようって」

 震える声と一緒に、目からは熱い涙がこぼれる。
 重症じゃなくて良かったと心から思うと、涙が止まらなくなった。

「もう二度と会えなかったらって考えたら、不安で不安で……」

 俯く私の頭の上に、ポンポンと宇田さんの温かい手が降りてくる。

「もう大丈夫。俺、ここにいるだろ?」

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