魅惑のハニーリップ
 宇田さんにもしものことがあったらと思うと、生きた心地がしない。
 このままもう会えない、なんてことになったら………

 嫌なことばかりが頭をよぎる。
 大きな病院の廊下を小走りに走りながら、その突き当たりを右に曲がった。

「あっ!」

 首に右手を当てながら左右に軽く回す素振りをし、正面から歩いてくるのは………
 私が今、一番会いたい人だった。

「宇田さんっ!!」

 必死な声音でそう呼びかけられたことに気付いて、宇田さんがひどく驚いた表情で私を見た。
 私はそのまま宇田さんの近くまでドタバタと駆け寄っていく。

「遥ちゃん、来てくれたんだ。悪い、病院出たら電話しようと思ってたんだけど。俺さ、さっき事故にあっちゃって……」

「大丈夫なんですか?!」

 事故にあったことなんてとっくに知っている。
 だから病院に飛んで来たのに。
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