魅惑のハニーリップ
「そうでしたね。来月初めに発表会がありましたよね」

「うん。だから、遥ちゃんも出張だね」

「……え?」

「俺、部長に販促部にも手伝ってほしいって要請しといたから。この仕事に携わった人間のほうがいいとなると……きっと遥ちゃんになるよ」

「そ、それって……」

「はは。俺、確信犯」

 宇田さんは私の驚く反応を楽しむように、にこにこと笑っているけれど。

 確信犯って……大丈夫なのかな?
 私が同じ仕事のサポートになるように仕向けた、ってことだから。

「全然俺らしくないよな。公私混同しかけてるもんな。でも、遥ちゃんをどうしても連れて行きたかった」

「そうなんですか?」

「三日間全く会えないのは……やっぱり寂しいし。毎日少しでも遥ちゃんの顔が見たいって思うから」

 そんなことを言われると、私は益々顔が熱くなってくるけれど。
 チラリと伺い見ると、発言したほうの宇田さんは全然平気そうにしている。

 やっぱり私より宇田さんのほうが……八歳も年上だから、大人だし余裕だ。

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