狼系王子とナイショの社内恋愛
◇「俺の名前、知ってますか?」



結城さんを部屋に上げてから、課長関係のモノを片づけていない事に気づいたけれど、まぁそれは仕方ないと諦める。
結城さんは知っているし特に問題はない。

ただ、未だに未練があるんだなって同情されるのは嫌だなと思ったけれど、今慌てて隠したりしたらますますそう思われそうだ。

部屋にあって、結城さんに課長の存在を匂わせるものといえば、写真ぐらいだと思う。
今でも飾ってあるのは、別に未練があるからってわけではなく、なんとなくそのままになっていただけだ。

課長と一緒に買いに行っただとか選んだだとか、そういう物は他にも結構あるけれど、それは気に入ってるからこの先も特に処分する必要は感じていない。
今はまだ、ふと買った時の事だとかを思い出したりもするけれど、もう吹っ切れ始めているのは自分でも感じているし。

だからこそ、写真もうっかり忘れていただけなのだけど……。
やっぱり、結城さんを玄関先で待たせておいて、その間に閉まっておくべきだったと後になって後悔した。

部屋に上がって座った途端、結城さんの視線が写真立てに止まって動かなくなってしまったから。

別に付き合っているわけでもないし、結城さんの好意だってそんなに真剣なものじゃないとは思っているけれど、なんだか気まずい。


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