狼系王子とナイショの社内恋愛


「なんで謝るんですか?」

クスっと笑う結城さんは、私のように店内のおしゃれな雰囲気に怯えている様子はなかった。
慣れてるのか、どこでも動じないタイプの人なのか。

「まさか本当にこんなお店に連れてきてくれると思わなかったので……。
あの、ちゃんと自分の分は出しますから」
「大丈夫ですよ」
「いえ、出します」

きっぱりと言うと、結城さんが困ったように眉を寄せて微笑む。

「実を言うと、営業先でこの店の優待券をもらったんです」
「優待券?」
「ずっと使えてなかったからちょうどよかったです」
「気になる子でも連れて来ればよかったのに。
こんなお店に連れてこられたら、結城さんの事意識するようになると思いますけど」

もっとも、そんな整った顔してたら高級レストランなんて演出しなくても女の子なんてどうにでもなるんだろうけど。

値段の書いていないメニューから好きなモノを決められるほどの度胸がなかったから、メニューは結城さんに任せる事にした。
高級の中でもなるべく高級じゃないものでって注文つきで。


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