こっち向けよ





「なに突っ立ってんの~?」



食器を洗いながら舞が声をかけてきた。



しまった。舞の目の前で気分に浸ってしまった。背を向けているとはいえ、恥ずかしい。



「ん?や、舞が進んで食器洗うとか、雨が雪になるんじゃないかって心配になってさ。」



照れ隠しでつい憎まれ口を言ってしまう。



「なんだとぉ、いつもあいさんのお手伝いしてるじゃん!」



いつものように笑いながらのやりとり。



「お手伝いって言っても周りを右往左往してるだけだろー」



「そんなことないです~!愁なんか、お手伝いしてるの見たことないのに料理上手いなんて反則!」



おっと、頬を膨らませてプイッとそっぽを向かれてしまった。



おーい、手元見ろー



…ん?



「それ、俺のこと誉めてない?」



「誉めましたけど!?」



プリプリ怒ってしまって、その可愛さがむしろ俺を煽る。



誉めましたけど!?って、アンタが反則だろ。



はいはい。落ち着け自分。





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