こっち向けよ
「はじめはショッピングモールで普通に買い物をしていたのに、話の途中から段々変になってった。『僕は家の会社をより大きくしたい。生まれてからずっとそう言われてきたし…舞ちゃんと婚約者なのもそのためだ。でも僕はちゃんと舞ちゃんを好きになって、舞ちゃんに交際を申し込んだんだよ。』そう言われた。」
時任なら言いそうなことだ。
やはり器が小さい。
「そして、『舞ちゃんは、僕の事が好き?』って聞かれて、好きだよって答えるしか選択肢はないからそう答えた…」
はぁ…俺が言われてぇし。
言わせたら意味がないからこうしてそばにいるだけだとゆーのに…
舞は大きく息を吸うと、膝の上で拳を作り言葉を吐き出した。
「『じゃあもっとお互いを知ろう。』って言われて時任グループのホテル、スイートルームに連れて行かれて」
はいストーップ!
「時任に電話しようか。」
舞の悩みはいつも最後までじっと聞いているけど、これは、無理。
ヤバい。怒りのあまり顔が笑ってるよ、俺…
「え、しゅ」
「そういえばまだ連絡してなかったな。あと関根にも。」
都合良く後回しにしていたことを引っ張り出す。
舞を困らせたくないって思っているのに、こういう事に関しては自制が効かない…
てか俺は2人の連絡先を知らないんだよな。