こっち向けよ
リビングの中央は部屋の隅に比べてかなり温かい。
「愁、ありがと…」
ソファへ戻るときは流石に自分で行くよな…
「あぁ、うん。」
舞はクッションを片手にソファへ戻り、肩掛けを身に付けながら座った。
すると、舞が隣をポンポンと叩く。
俺はパーカーを着ながら舞の隣に少し間を空けて座った。
ザー…
相変わらず聞こえる雨音と暖房の音が暫し沈黙を埋めた。
「大したことじゃないの…ただ私が耐えられなかっただけ…」
ボーッと、正面の出窓に母さんが置いた好きな花と窓を覆うレースのカーテンを見ていたら左耳に響いた声。
また舞は俯き、自分の手を見ているようだった。
“耐えられなかっただけ”ってなんだよ…
時任に一体何をされたんだよ…
密かに拳を握り締める。
話の内容によっては、時任の未来を消してしまうかもしれない…