トイレキッス
ドアを開けて屋上に出ると、風がふきつけてきた。
屋上では、三十人くらいの生徒達が、発声練習をしていた。ほとんどが女生徒だ。何人かが、洋平の方を見た。
その中のひとりの、眼鏡をかけた女生徒が、こちらに駆けよってきた。
「すいません。いまは演劇部が練習してるんで、屋上に出るのは遠慮してもらえませんか」
「あの、おれ入部したいんですけど」
「え?」
「演劇部に、入部したいんです」
「ああ、そうなん?」眼鏡の女生徒は、ふりむいて声をあげた。「仁さん、入部希望者やって」
「何やと?」
生徒達の中心にいた、色の黒い男子生徒が、大股で走ってきた。