トイレキッス
主人が部屋から出ていくと、ふたりは荷物を置いて腰をおろした。窓の縁には雪がだいぶたまっていた。一階で主人が料理をしているのだろう。畳の下から揚げものの音が聞こえてくる。
ふたりは暇潰しに部屋を物色した。すると押し入れの中から将棋セットが出てきたので、夕食の時間までそれで遊んだ。
夕食を終えた頃から、洋平はだんだんと落ちつかなくなってきた。
洋平は、寝るとき、ミツキとふたりきりという状況にどう対処するべきかと悩んでいた。
要するに発情していた。
泊まると決めたときからその悩みは頭の中に存在しており、いまでは洋平の思考のほとんどをムラムラと支配していた。
欲望は当然あるのだが、それを行うには莫大な勇気が必要である。告白ですら二ヶ月もかかった自分にはたしてできるのか。
そんな悩みをさとられぬよう、できるだけ普通にふるまおうとしたが、それでも緊張のせいでミツキと目をあわすことができなかった。
風呂の時間になると、民宿の奥さんが洗面用具一式を用意してくれた。ジャンケンで順番を決めて、まず洋平からはいることにした。
熱い湯につかっていると、ますます気分が高揚してたまらなくなった。
部屋にもどると、すでに布団が敷かれていた。ちゃんと二組敷かれているのを見て、少しがっかりした。
ミツキが風呂にはいっている間、洋平はひたすら部屋の中を歩き回った。
畳の上を往復しながら、甘い期待を抱き、あわててその期待を否定し、だがもしかするともしかするぞ、とつぶやいては期待を取り戻し、同じ思考を何度もくりかえしていた。