接吻《修正中》
「寛久」


何度俺は、お袋を怨んだだろう。

悪いのはお袋だけじゃない。

何も知らず、笑ってお土産を持って帰ってくる親父も悪いんだ。

お袋の付けた薄いブルーのエプロンは、何年も使っているから調味料を零した跡が目立つ。


「俺は、アンタの秘密を知ってるよ・・・。もう、何年も前から」

「寛久・・・あのねっ・・・!」


俺の言葉に突然焦りだすお袋は、また俺の腕を握りしめるようにギュッと掴む。


「安心しろよ」


そう、俺はもう何年も前から知ってる。


「親父には、アンタに他に男がいるって言わねえからさ・・・」

「・・・ひろ・・・」


俺の言葉を聞いたお袋の顔は、一瞬で血の気が引くように青ざめる。

そしてそのまま・・・。

崩れ落ちるように、床にしゃがみ込んだ。

知らない訳がないだろ?

俺はあんたの息子なんだから・・・。

あんたの事は、一番よく解ってる。
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