七夕レイニー


 口々に言われたところで、実感も何もない。
でも、ここでそのことを言うのはあまりにも不自然すぎる気がする。
私は一応、ここでは調子を合わせておくことにした。


「もう、これでとうとうミズキにも春が来たと思ったのに」

「こんなこと言っちゃうなんて、ねえ?」

「はあ⁉」


 思わず机をバン、と叩いて三人を凝視。面白がってププーと笑う。そう…三人は私たち二人をそういう風にみていたのね。

「まったく!」

「まあまあ、落ち着いてよ。それよりも、もう学校に誰もいないよ?」

「そっか、今日は集会とホームルームだけの日だったんだっけ」


 口にだしてから周りを見れば、まだ昼下がりだというのに学校に人の気配は全くない。
早く終わってみんな早々に帰ってしまったらしい。
この分だと、まだ残っているのは本当に私たちだけかもしれない。


「誰かさんがぐっすりだったからね」


 嫌味を飛ばされても、何も言えない。悪かったわね、と膨れるだけにしておいた。




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