不思議な“キツネ”ちゃん

「やっぱり、な」

診察室に響く声には哀しみが含んでて
思わず目を逸らす。

「進行してたよ。しかも危険な状態」

検査の結果を見るため診察室に来たが
宏樹から発せられる空気が重たい。

部屋は宏樹専用のため誰もいない。

だから余計に重く感じる。


「今すぐ入院が必要だ、絶対に」

入院

前から言われていたが無視してきた。

だか、今回は絶対。


医者が絶対という時はかなり危ない。

そんな意味を持つ言葉を口にするのは
私の体がもう本当にダメだという証拠。


「もって、どのくらい?」

癌である私にとっては
もう治療不可能ということ。

あの人との約束を守りたかったが
残念ながら難しいかもしれない。


宏樹は迷っていたが
覚悟を決めたらしく目を見て言った。

「もっても、3ヶ月」


3ヶ月。
短いようで長くも感じられる。

3ヶ月たてば私はあの人の所に行ける。

3ヶ月あれば復讐もできる。


「そっか」


でもやっぱり悲しい。

彼女に会う前までは約束のためにも
生きるために必死だった。

病気で苦しくても耐えてきた。

なのに3ヶ月したら私はいなくなる。












再び、私のいない世界が来るのだ。



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