sound village
  


その何かが、何であるか
わかったのは、終業間近の
ことだった。


『斐川、元気?』

佐藤係長定番の電話の冒頭

「はい。」

…二時間前に会いましたよね?
最初の頃、そうマトモに答え
先輩方に笑われた事が、まだ、
記憶に新しい。

それに、元気がないのは、
貴方に同行している敗北者だと
思うのだが…


『俺の代わりに行って欲しい
取引先があるんだ。届け物は
総務で準備済みだから、
それを預かって行ってくれ。』


総務?インベスターガイドか
定款でも届けるのだろうか?
今、何か行政に申請するような
案件があっただろうか?


そんなことを頭に巡らせていれば


『何時ごろになる?
先方に連絡しておくから。』


そう言って、取引先のあらかたの
場所を、係長は述べる。


「直ぐに用意して出ます。」


そこなら、車であれば半時間程で
到着できるだろう。


『じゃあ、一時間後でアポ取して
おくから、よろしくな。』


詳細住所はメールするといって
係長は電話をきってしまった。




 


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