sound village

計算に勝る正念**side神島

 

 
それからは、
あっという間だった。

柏木の転籍が決まり、
俺と斐川の帰国が承認された途端
社宅の退去日が通知された。

俺も斐川も元々部屋を借りて
一人暮らしをしていたので
帰国後住まう部屋の手配を
佐藤係長にお願いして
今日の出国日に至る。

柏木は転籍が決まった途端
膝の手術を受け、現在、
入院中だ。数日の入院で済む
らしく、退院後はリヒトの実家に
お世話になるらしい。

全く歩き方等動きに怪しげな
所が見えなかったのだが
相当具合が悪かったらしい。

斐川とは空港で落ち合う事にして
俺は、出国前に柏木の見舞いに
来ていた。

「おい。神島、そろそろ出やんと
チェックインの時間やろ。」

腕時計に目を遣り柏木が言う。

「じゃあ、そろそろ行くよ。
何か、音村係長に伝言ある?」

あれだけ、好意を寄せていたの
だから、何か伝えたい事でも
あるかと問えば

「戻ったら直接伝える。」

そう言って、柏木は口角を
ニッと引き上げる。

「リヒトにも口止めしてるけど
俺が入院してる事は、くれぐれも
レンちゃんとテルテルには
言うなよ。」

「そこ、こだわるよな。
わかってるよ。」



 


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