sound village

謹んで承りました**sideレン

  

まさか…こんな場所で
プロポーズのリトライを
受けるとは思わなかった。

眼下のコートでは
アフロ系の外国人が涙を拭い
泣き笑いしていて、
あきれた表情の神島くんと
苦笑混じりのリヒトが宥めている。

柏木君は、コートの中で
たくさんの男の子達と
ハイタッチを繰り返していて。

「めーっちゃ、嬉しそうね。
1号ったら♪レンちゃん、
決断してヨカッタねぇ。」

気が付けば、隣に並び立つ
真月さんが笑んだ。

「今でも、柏木くんにとって
本当に良い事なのかな
って…ちょっと不安。」

まだ揺らぐ本心を吐き出せば

「大丈夫だよ。1号の親兄弟も
大歓迎だったんでしょ。
だったら、1号と2人で
幸せになればいいんだよ。
彼は、この為に
何年もかけて準備してたもの。
大丈夫だって。」

そういって、盛り上がる
男の子達を微笑ましげに
真月さんは眺める。

「うん。どうなるか
分かんないのは、誰を選んでも
一緒なんだって思ってね。
だったら、好きな人と
進む方がいいかなって…」

近々、誕生日に渡そうと
注文していたユニセックスの
スポーツウォッチ。ネットで
“腕時計のプレゼント”の意味を
見たときは、ドン引きして
怯んだのだけど。

お手軽な価格で
POPなデザインのモノなら、
重くないかなぁ…って。

今日、出掛けに届いたから、
後でラッピングするつもりで
ポケットに入れていたんだけど
ここで渡すことになるとは…

「あら…?」

真月さんの視線の先を
見遣れば、こちらへ歩いてくる
斐川くんがいて。

「私の弟子じゃないの♪」

彼女はクスクス笑う。


 

 

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