ロンギング
よっぽど酷い格好になっているのだろう。外に出てタクシーが捕まり易い場所までの道すがら好奇心を隠しきれない通行人たちの視線がチクチクした。


タクシーに乗り込んで行き先を告げると、車を発進させた運転手はバックミラー越しに私の有り様を確認してぎょっとしつつも、何事もなかったように沈黙を守った。


きっと今日家に帰ったら家族に「今日は変な客を乗せた」と嬉々として話すのだろう。


彼に家族がいれば……。だけれど。
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