私があなたを愛したこと
「あおくーん!」
元気良く名前を呼んでいるのはあーちゃんだ。
彩乃。高校三年生で軽音部に所属している。
軽音部ではドラムをやっていて、若干ぽっちゃりしているが動きは機敏だ。
あおくん、は彼のあだなで、そのままだ。
蒼、それが彼の名前。
蒼と彩乃は数ヶ月ほど前から仲が良いらしい。
友達があまりいない彼と私は性格上の問題もあるのかもしれないが彼女は気兼ねなく接してくれた。
私が中3だというと2人とも驚いて、声を揃えてそうは見えないと笑いこけていた。
そんな姿を見てちょっとの気恥ずかしさと、嫉妬を感じた。

私はそんな感情を隠して、「彩乃さんは絵とか描かれるんですか?」と聞くと
彼女は「いいよ!あーちゃんで!」と言ってきた。
私は呼び捨て苦手だから、という理由であーちゃんさん、と呼ばせてもらうことにした。
あーちゃんさんは絵を描かないらしい。
接点なんて、なにもないじゃん。と少しの優越感を感じて、私の方が彼に近いような、そんな錯覚を覚えていた。
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