ダ・ル・マ・さ・ん・が・コ・ロ・シ・タ 【完】



「今日も来てたのね……」

数日間付き添っている俺に、沙奈の母親はこんな話をしてくれた。

「事件の夜、初めて沙奈ちゃん、お父さんに反抗したのよ」

「反抗? 沙奈が?」

「えぇ。最近夜に出歩くのを怒られて、それでも、どうしても会いたい人がいる、だからどんなに止められても会うって言ったの」

……泣いてたのは。

「クスッ、いつの間にか大人になってるのよね。お父さんは、あなたに沙奈を取られてくやしいのよ。だから、許してあげて」

「はい」

「……でもね、残酷なことを言うようだけど、沙奈とはもう関わらないでほしい気持ちは私も一緒。この子が、自分の傷だけじゃなく、あなたの傷まで見てたら、事件のことをいつまでも忘れられない。それこそ、一生の傷なのよ」

母親の言葉にズキズキ痛む。右手が、心も。

どこかでわかっていた。

“運命共同体”“一心同体”、そう表現すれば、聞こえはいい。

でも現実は、”差別”“好奇”の目に遭うのが倍になるだけ。

俺が沙奈のそばにいる、ただそれだけで傷つけてしまうんだ。

「……け、い、た……マ、マ……」

「「沙奈!」」

彼女が目を覚ました。

「先生を呼んでくるわ!」

母親は病室から飛び出していく。

俺は複雑な心境で頬をさする。

「……その、顔、ど、うしたの?」

……そうだった。

殴られた顔は、まだ腫れていた。

いろんな意味で、彼女に合わせる顔なんてない。

俺は、ウソツキだから……。

「沙奈を゛抱えて走ったら、グスッ、重くてさ、ッ゛派手にコケたんだよ!」

「バカ……」

必死で泣くのを堪える俺に、沙奈はもう一度笑ってくれた。

その笑顔を心に焼きつける。



 
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