月と太陽
「しずく…」

心配そうな表情を浮かべる梨子。

わたしは「平気よ、すぐ戻るから」と言うと、タケルの手を離し、ゆっくりと幸ちゃんへ一歩一歩近付いて行った。

わたしは幸ちゃんと少し距離をとって、立ち止まった。

「おう、おはよう」

ぎこちない挨拶をする幸ちゃん。

わたしも「おはよう」と返した。

「連絡、ずっと待ってたんだけどさ」

幸ちゃんは明るくそう言った。

「…ごめんね」

「あ、いや、いいんだ。…それより、こないだ俺のダチがしずくに不快な思いみたいで、ごめんな」

「ううん。幸ちゃんは何も悪くないよ」

「もうしずくには近付かないよう言ってあるから、だから、俺のことを避けないでほしい」

そう言って、幸ちゃんは悲しそうな顔をした。

「わかった」なんて返事が出来ない自分。

恐いのは幸ちゃんではなく、あのロン毛男たちなのに、幸ちゃんと繋がっていると思うと、どうしても首を縦に振れない。

幸ちゃんへの罪悪感が湧き上がってくるのを感じた。

「あいつと…、付き合ってるのか?」

何も言わないわたしに、幸ちゃんは尋ねる。

「あいつ」とは、タケルのことだろう。

わたしは俯き、強張る表情を変えずに首を縦に振った。
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