イジワル王子と屋根の下



新しい部屋では、自分の好きなように過ごすんだ。



お風呂がぬるめでも文句言う人なんていないし、朝もそこまで早起きしなくて大丈夫。

怒られたり犬扱いされなくて済むし、新しい恋をして、優しい彼氏を見つけるんだ。



(…念願の一人暮らしだもん)



そう、元々描いていた理想の一人暮らしには意地悪な男の姿なんてなかった。

だから、これでいいんだ。正解なんだ。



(…わかってる、のに)



目の前には、まだ箱に入れることが出来ずにいるクマのぬいぐるみ。それはあの日、お祭りで瞬がくれた物。

それを見つめるだけで、またポロポロとこぼれ出す涙。


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