メイクの魔法
「おい、一ノ瀬?聞いてるか?」

ぼーっと、壮介との過去を振り返っていた香穂は、顔の前を行き来する手を見て我にかえった。

「えっ....ああ、ごめん右京君。どうしたの?」

訝しそうに香穂を見つめるのは、片瀬右京。
第二研究グループの主任で第一研究グループの香穂とは同期で、同じ主任になったことから、何でも相談しあえる友人だ。

「お前に頼まれてたデータの解析結果を持ってきたぞ。...大丈夫か?」

「ありがと。...うん、大丈夫。」

(別れてから一週間もたったのに。まだ乗り越えなれないなんて。)

胸が苦しくなって、右京にばれないようにそっと息を吐いた。

「なあ、一ノ瀬。今日久しぶりにFUMOに飲みにいかないか?」

「うん、久しぶりに行こっか!今日は仕事5時までだし。」

右京の提案に少し逡巡したが、香穂は笑顔で返事をした。

「そうこなくちゃな。じゃあ俺も終わったら連絡する。それじゃあまたな。」

片手を挙げて、右京は自分のラボへ戻って行った。

(ありがとう、右京君。)

1人でいると、どうしても壮介の事を考えてしまう。こうやって連れ出してくれるのは本当にありがたかった。


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