Starting Line
次の日の朝練で、
めったに来ない顧問で数学の先生の摩岸先生が来た。
「いや~試合前で悪いんですけどね、昨日、ワークルームの向こうの窓が開いていたんですよ。
昨日のカギ当番は誰ですか?」
(え!?)
おかしい、と香澄は思った。
(あんなにチェックしたのに。
 向こうの窓だって、絶対
 昨日は閉まってた!)
「誰ですか?」
みんなは一度に香澄の方を見た。
「私・・・です・・・」
香澄はうつむいて言った。
「あのねぇ、君は試合に出られないからいいかもしれないけど、みんなは今大事な時期なんだよ?」
わかってる、それくらい。
香澄は摩岸にそう言ってやりたかった。
でも、香澄はうつむいたままだった。
みんなの顔なんて怖くて見れない。
「はぁ・・・」
晴香が小さくため息をついた。
でも、確かに、昨日は閉まっていた。
香澄は摩岸にそう言おうとしたが、声にならなかった。
また目元が熱くなってきて、香澄は泣きそうになった。
「あのっ・・・」
そこで声を出したのは、秀だった。
「もうすぐ試合なんだし・・・カギ当番許してやってくれませんか。」
「秀君。そんなことできたら言われなくてもしているよ。」
「・・・」
秀がそういったのは香澄のためではなかったとしても、香澄はすごくうれしかった。
「教頭先生が、当たり前のことをやらないでどうする、とおっしゃるんだよ・・・。君たちにはわるいけど、部活停止ということで・・・」

香澄には、それが信じられなかった。
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