Starting Line
光が静けさの中、
小声で隣にいた真志に声をかけた。
「ねぇ、真志がなんか言ってやってよ!」
「・・・お前が言えばいいだろ」
「こういうときは男がいうもんでしょ!」
そんなこと、だれが決めたのだろうか。
「まぁ、試合なんてできなくても、俺らが上達しないだけだけど」
香澄にはその真志の言葉が一番傷ついた。

真志が部屋をでると光も歩き出した。
晴香は行こうとしたが、秀のほうをみて足をとめた。
秀は行こうとしなかった。
「秀?何やってんの。帰ろうよ。」
香澄は、晴香を少しでも友達だと思ったことに後悔した。
「僕は昨日、香澄が何回も閉まっているか確認しているところを見たよ。」
秀が言った。
「それでも、開いてちゃなぁ・・・」
摩岸はそう言うと外にでていった。
「・・・」
晴香も何も言わず外に出て行った。

「・・・元気出して。
 君はちゃんと閉めたってことは分かってるから。」
香澄は驚いた。
「あくまで僕の考えだけどね・・
 誰かが香澄が閉めた後に入ったと思うんだ。」
「・・そうなの?」
「うん。絶対そうだ。」
「・・・なんで言い切れるの?
 何か証拠があるの?」
「証拠なんて無いけど・・
 僕は、ただ香澄を信じたいだけさ。」
「え・・」
香澄はどう返せばいいのか分からなかった。
顔が熱くなった。
鳥肌がたった。
心臓が・・すごく鳴った。
がんばって香澄は秀の顔を見た。
優しく微笑む秀の顔が、
テレビでみる『神風』という大人気の若い男のユニットの、中でも一番人気の電治くんよりかっこよく見えた。
〔注》実際にこんなユニットは無いし、電治くんもいません。〕

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