Starting Line
それから、一週間部活はもちろん無かった。


試合の日。
会場は香澄の家の近所だったので、こっそり香澄は自転車で見にきた。
別に、応援しにきたわけではない。
反省してきたわけでもない。
ただ、秀がこの前来れたら来てねと言ってきたから、
・・・というより、秀に会いたかったから。
香澄は、異性にこんなに気にかけてもらったのは、秀が初めてだった。
初めてだったから・・こんなに気になるだけ。
香澄はそう思った。

晴香は、一回戦目で惜しくも3-2セットで負けた。
光は、相手も弱かったけど、あっさり負けた。
女子がボロボロの中、
男子は2回戦目まで本気を出さないうちに勝ち進んだ。

真志の3回戦目の相手は、今までより強かった。
真志は、しぶといカットマンだった。
真志が軽く出したサーブも、すごいカーブする。
相手がすごい回転のサーブを出してこれば、それを倍にして返す。
真志の回転を返せる者は少なかった。
でも、その相手はドライブで返してきた。
真志は、直球には向いていなかったせいか、惜しくも3回戦目で敗れた。

残ったのは秀だけになった。

秀の出番は後の方だったので、晴香と光は競技場の外で休憩していた。
「ねぇ、やっぱり私たち負けちゃったね・・。」
光がベンチに座って晴香に言う。
「やっぱりって何よ。」
「だって。アイツが・・・あ~香澄のことね。
カギ閉め忘れるとかとろくさいことしたから、練習する時間減ったじゃん。」
(「カギを閉め忘れる・・・?」)
晴香は、何かが矛盾しているような気がした。
(え・・・っ!!だとしたら、もしかして・・・)
晴香の顔が青ざめた。
「ねぇ、光・・・。」
「何?」
「香澄、『カギ閉め忘れる』なんて聞いてないよ・・・?」
「え?」
「『窓が開いていた』って言ってただけで・・・」
「・・・晴香?何いってんの・・・?」
晴香はすばやくベンチからのいた。
「何、晴香、急に立って・・・」
「アンタだったんだ・・・
 香澄が帰った後に窓開けたの・・・」
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