アフターレイン
 焦る直己に二の腕をひっつかまれ、半ば引きずられるような形でリビングに連行される。



 そこで俺が目の当たりにしたのは、苦しそうにえづくマールと、眉尻を下げて不安そうにおろおろする親父の姿だった。



 咽せるマールのすぐそばに、嘔吐物の水溜まりがある。

 恐らく食べてすぐに吐き戻したんだろう、キャットフードは原型を残したままだった。



 その中に、毛玉は──ない。



「どうしよう、アニキ、これってやばいのかな」

「……わかんねぇ」

「びょ、病院連れてくか!? それならパパ車出すぞ!!」



 親父の言葉に、パッと振り返って時計を見た。



 デジタル表示で〝18:13〟と表示されている。

 最寄りの動物病院が閉まるのは、確か19時。夜の7時だったはずだ。
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