「約束」涙の君を【完】
8時……
3時間待っているけど、まだ帰ってこない。
そう思った時、車のヘッドライトが庭先に見えた。
二人は車から降り、縁側から居間に入ると、
もう並べてあった夕飯を口にする前に、おじいちゃんが、私に紙袋を渡してきた。
「開けてみな」
私は紙袋のマークを見て、もしかしてという気持ちを抑えながら、
中を覗くと、
白い携帯電話が入っていた。
「これから高校に行くんだ。
必要だろ?
今日みたいなことがあると、心配だしな。
メールができれば安心だし、
そのうち電話もできるだろうしな」
私は紙袋の中から、携帯を取り出した。
これ以上おじいちゃんとおばあちゃんに負担をかけられないからって、
携帯がほしいなんて思っちゃいけないって思ってた。
中学の頃も、
周りはみんな持っていたけど、
うちの中がゴタゴタしていたから、
携帯をほしいなんてとても言える状況じゃなかった。
だから、携帯は無理だって諦めてたのに……
「優衣には、お金では買えないものを、
毎日毎日もらっているからな。
携帯電話ぐらいなんともないさ。
遠慮せずに使いな。
それ、祥太が選んだんだ」