「約束」涙の君を【完】




かき氷を持ったまま、祥太の後ろから顔を見上げると、


その横顔は真剣な表情で、まっすぐ前を見ていた。



「祥太って、そんなだったんだ……」



隣のあおいは呆気にとられていた。



「祥太ぁ…お前そんなんじゃ優衣ちゃん高校来たら、大変だぞ。

優衣ちゃんかわい……」


「わかってるよ。


そんなこと……わかってんだよ……」


祥太は下を向いて、自分の髪をくしゃくしゃっとした。



「あはっ、あははははっ!!


祥太、超ウケんだけど!!


賢人、行こっか。

早く行かないと花火終わっちゃうよ。

祥太は優衣とだよね。


ごめんごめん、邪魔して。


じゃあ、優衣、後でメールするね」



あおいは、賢人くんをぐいぐいと引っ張って行ってしまった。




二人残されてしまって、後ろ姿の祥太が、

なかなか振り向いてくれないから、


ちょと不安になってしまった。



祥太に腕を引っ張られなくても、

私は賢人くんに分けたりしなかったのに。


だって、祥太のかき氷じゃん……



怒っているのかな……



「行こ」



不安になっていたら、祥太はこっちを見ないまま、歩き出してしまった。



祥太の隣まで追いかけて、祥太の顔を見上げると、

祥太はちょっと顔をそらした。




「あれ、結城くんじゃない?」


「結城くん!」



歩いている間、何人かの女の子に声をかけられたんだけど、

祥太は、軽く手を上げるだけで、


立ち止まった女子たちをそのままにして歩き続けていた。



私は、祥太がちょっと不機嫌なのも気になるし、


女子たちが、「誰あの子」って睨んできたのも気になるし。


いろいろ悩んでいたら、目の前のかき氷が溶け出してしまっていて、


祥太に返さなくちゃと思って、

祥太に向かって、溶け気味のかき氷を差し出した。


祥太はかき氷を受け取って、ごくごくと飲み干して、


ゴミ箱に捨てた。




そして、広い芝生の公園に着き、


祥太が立ち止まって空を見上げた。



その時、夜空いっぱいに大きな花火が広がった。







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